青春シンコペーション


第3章 鬼教授が家政夫に!(1)


コンクールの予選までは1カ月しかなかった。その間に難曲を2曲仕上げなければならない。
(いったいどうすればいいんだろう)
井倉は頭を抱えた。しかし、彼の恩師達は容赦がなかった。

「じゃあ、取り合えず弾いてみて」
ハンスが言った。
書類を出したあと、三人は真っ直ぐハンスの家に来た。そして、休む間もなく、井倉にピアノを弾けと命じたのだ。
「さあ、どうした、井倉。さっさと弾いてみんか。取り合えずどんなだか弾いてみなければわからんだろうが……」
黒木が急かす。
(取り合えずと言われても……。どっちも最近練習していない曲だし……)
どんな恐ろしいコメントが来るかと思うと身がすくんだ。その間にも黒木の尋常ではない気迫のようなオーラが井倉の背をじりじりと圧迫し続けた。

(ええい、もうどうにでもなれ!)
どうせ叱られるのならば、弾いて叱られた方がましだと覚悟を決めた。そこで、彼はベートーヴェンのソナタを弾いた。が、案の定、まだほんの数小節もいかないうちに黒木の雷が炸裂した。

「何だ、それは! それでもベートーヴェンのつもりか!」
井倉は思わず首を縮めて手を引っ込めた。
「黒木さん、駄目です。そんなに怒鳴ったら怖いですよ」
ハンスが言った。
「しかしですね」
弟子の不甲斐無さに黒木はぎりぎりと歯がみした。
「井倉君は多分、曲を知らなかったですよ。ね、そうでしょう?」
ハンスがにっこりと微笑む。
(その言い方も怖い)
井倉はこれから先の自分の行く末を思って悲嘆に暮れた。

「では、少しずつ練習しましょう」
ハンスが言った。
「最初はゆっくりでいいです。このメトロノームに合わせて、音を正確に取ってください」
「はい」
井倉は楽譜を見据えた。そして、慎重に弾いた。
「そこ! リズムが違う!」
黒木が注意する。
「速度が変わってもリズムは同じだ。勝手に曲を作るな」
「はい」
井倉は従順に従った。

「ほら、また乱れた。メトロノームの音を聴け」
黒木がまた注意する。
「それと、音が違うですね。ベートーヴェンなら、指先をもっと鍵盤に付けないと……。当たる面積を広くしてないと駄目です」
ハンスが言った。
「わかりました」
井倉は二人の指導者から言われたことを忠実に守ろうとした。何度やっても彼らを満足させるようには弾けなかったが、それでも繰り返し練習を続けた。

いつの間にか周囲はすっかり夜になっていた。
「おや、もうこんな時間か。ご近所に迷惑だな。今日のところはこの辺にしておこう」
黒木が腕時計を見て言った。
「はい。ありがとうございました」
井倉がそう言って頭を下げた。

「黒木さん、よろしかったら、お夕食を一緒に如何ですか?」
美樹がやって来て誘った。
「でも、それはご迷惑じゃ……」
「すぐに用意できますから……」
彼女が言った。
「あ、すみません。それ、僕の仕事なのに……」
井倉が慌てたように言う。
「あら、いいのよ。井倉君はコンクールの練習が大事でしょう?」
「美樹ちゃん、今夜のメニューは何ですか?」
ハンスが訊いた。
「ハンバーグよ。と、いっても、実は井倉君が作っておいてくれたのを解凍して焼くだけなんだけど……」
美樹がくすっと笑って言う。

「何だ、井倉、おまえ料理が得意なのか?」
黒木が訊いた。
「え、別に得意ってほどではありませんが、一人暮らししてたので……。それに、ただで居候させてもらう訳にはいきませんので、ちょっとおうちの仕事をお手伝いさせていただいているんです」
「そうか。そいつはなかなか感心だ。よし。それじゃあ、おまえのハンバーグとやらを御馳走になるか」
そう言って黒木が笑う。
「それじゃ、すぐに用意しますね」
井倉は一瞬びくっと身をすくめたが、美樹が台所へ走って行ったので、彼もあとを追った。

「僕もお手伝いします」
「でも……」
「いいんです。やらせてください。そうでないと僕、とても身が持ちません」
井倉はそう言って、彼女が盛りつけた皿をテーブルに運んだ。

食事は和やかな雰囲気で終わった。
「それじゃあな、明日は大学があるから、その間の指導はハンス先生にお願いします。私は夜にでもまた伺いますので……」
「わかりました。大丈夫です。任せてください」
ハンスが笑う。
「井倉、しっかり練習しておくんだぞ」
そう言って黒木は井倉の肩を叩いて帰って行った。

「あ、食器洗うの僕がやりますから……」
井倉が台所に来て言った。
「駄目よ。井倉君、手は大切にしないと……」
「でも……」
「きっとできるわ」
美樹が言った。
「え?」
「井倉君ならきっと弾ける。だから、頑張ってね」
美樹が笑う。
「美樹さん……」
井倉は胸の中がじわりと温かくなるのを感じた。

実を言うと、自分にはとてもできないと逃げ出したい気分になっていたのだ。難易度の高過ぎる曲。そして、彩香に勝つなどという無謀な宣言。それだけで彼の胸は押しつぶされそうだった。なのに、黒木もハンスも諦めてくれないのだ。怒鳴られたり、叱られたり、こんなので本当に弾けるようになるのか、不安で仕方がなかった。そんな井倉の心を察して美樹はやさしくしてくれた。無論、ハンスもやさしかったが、ピアノに関してのことは譲らない。ピアニストなのだから仕方がないし、指導は厳しくしなければいけないと思う。そんなことは承知している。ハンスのことは好きだった。しかし、彼は事あるごとに言うのだ。

――井倉君は、僕が拾ったです。だから、君は僕のものなんです。勝手なことは許しません

(いい人なんだけどな)
一生それを言われ続けなきゃならないのかと思うと、もう二度とあんなことはすまいと心に決めた。

「井倉君、お茶でも飲む?」
美樹が訊いた。
「いえ、結構です。今夜は先に休ませてもらっていいですか?」
「どうぞ。今日は疲れたでしょ? ゆっくり休むといいわ」
美樹が微笑んでくれたので、ほっと心が明るくなった。
(彩香さんもこんな風にやさしい笑顔を向けてくれたらいいのにな)
昼間、エレベーターですれ違った時の彼女を思い出して、彼は少し寂しくなった。


夜。井倉は疲れてすぐにベッドに潜り込んだ。が、いろいろなことが頭に浮かんで眠れそうにない。ピアノのこと。コンクールのこと。そして、彩香のこと。更には家のことや音大のことなど取りとめもなく浮かんで来て、どうしたら最悪な事態を回避することができたのかを考えてみた。もう既に通過してしまった過去のことを考えても仕方がなかった。今更、結果が変えられる訳でもない。が、それでも彼はぐるぐると考え続けた。
「何だか眠れないや」
井倉はそっとドアを開くと廊下へ出た。

時間はもう深夜1時を回っている。辺りはしんと静まり返っていた。途中、部屋の灯りが一つ点いていた。美樹の書斎だ。
(美樹さん、またこんな遅い時間までお仕事してるのかな。作家さんてのも大変だ。その分、僕がお手伝いするということになっていたのに……。これじゃ美樹さんに余計な負担を掛けてしまうな)
井倉は心の中ですまないと思って詫びた。
(そうだ。何か温かい飲み物でも入れて来てあげよう)
彼はそっと部屋の前を通り過ぎた。そして、間接照明を頼りに階段を降りる。

リビングは真っ暗だった。井倉は台所に向かおうとして、階段の下の電気を点けた。広いリビングに薄らと灯りが射し込む。が、その灯りも奥までは届かない。黒い闇の安寧がそこにあった。ところが、その暗闇の先に影が見えた。
(誰かいる)
一瞬の緊張。井倉はゆっくりとリビングに向かった。手前の応接セットを過ぎたところで、思わず足を止める。人影はピアノの前にいた。
(ハンス先生……?)
闇の中で、彼はピアノを弾いていた。いや、実際には音を出していなかった。彼は蓋の上で指を動かしていたのだ。それは、あのベートーヴェンのソナタだった。井倉には確かにそう聞こえた。ハンスは井倉に指導するためにどう教えたらいいのか実際に試して研究していたのだ。

(ハンス先生……)
井倉の胸はじんと熱くなった。
(頑張らなくちゃ……)
井倉はそのまま階段を戻って行った。

廊下を歩いて行くと丁度ドアが開いて美樹が出て来た。
「あ、ごめんなさい。僕、今飲み物でもお持ちしようかと思って下に行ったんですけど、ハンス先生がピアノの前にいらしたので、僕、戻って来てしまいました」
「あら、ハンスってば、深夜アニメを見るって下に降りたんだけど……」
美樹が不思議そうに言う。
「いえ、彼は僕のために考えてくださっているんです。音は出していなくても、僕には聞こえるんです。ハンス先生はすごい人です」
井倉の頬は高揚していた。
「そうかもね」
美樹はそう言って笑った。

「僕も頑張ります。きっと先生の期待に応えてみせます」
「そう。応援してるわ」
美樹が言った。
「それじゃ、もう遅いからおやすみなさい、井倉君」
「はい。おやすみなさい」

部屋に戻った井倉は楽譜を開いて、曲の隅々まで何度も見返し、机の上で指を動かしてみた。何度も何度も繰り返し……。楽譜からもいろいろなことが読めて来た。何故そこにその記号が記されているのかとか、何故、そこにアクセントがある必要があるのかなど、じっくり見直してみると、いろいろな疑問が頭をもたげた。そして、幾つかの仮説と幾つかの想いが、そこから掴み取れたような気がした。
「できる。きっと僕はこの曲を弾ける」
彼は幸せな感情の昂りの中で眠りについた。


翌朝。井倉はいつものように早起きして、掃除を済ませ、美樹やハンスのための朝食を用意した。美樹は自分がするからいいと言ったのだが、井倉はそれだけは譲れないと言い張るので、美樹の方が折れるしかなかった。

「井倉君って、案外頑固なところがあるのね」
猫達に餌をやっていたハンスのところに来て彼女が言った。
「だからきっといいものになります」
ハンスが言った。
「そうね」
美樹も頷く。

「ところで、昨夜は遅くまで井倉君のためにピアノの研究をしていたんですってね」
美樹が感心したように訊いた。
「え? 僕はただ井倉君のピアノ教えてたら、僕も弾いてみたくなっただけですけど……」
「そうなの? でも、音を出さずに弾いてたんでしょう? 彼に教える方法を研究していたんじゃないの?」
「だって、夜中に音出したら、ご近所に迷惑だって美樹ちゃん怒ったですよ。だから、僕静かに弾いたです」
「ふーん。でも、ちょっと見直してたんだけどな。ハンスのこと。ピアニストとしてのあなたって、やっぱりカッコいいなって……」
「美樹……」
ハンスは困惑したような顔をした。それから黙って俯くと餌を食べているピッツァとリッツァの背中を交互に撫でた。

「ごめん……」
そんな彼を見て美樹は詫びた。しかし、ハンスは顔を上げるとじっと彼女を見つめて言った。
「僕はいつでもカッコいいです。それに、ピアノは井倉君が弾いてくれますよ」
「そうね」
これからは演奏者としてではなく、指導者として、若い人達を育てて行くのだという決意を感じて、美樹もうれしい気持ちになった。


朝食が済むと、早速午前中のレッスンが始まった。といっても、はじめは基礎練習のハノンやツェルニーの本を自主的に練習する。そのあとでようやく本番の曲の練習に入るという段取りだった。
ハノンは井倉にとってはいつもやっている練習なので比較的楽に弾けた。が、リビングで猫達と戯れていたハンスが時々やって来て、ミスした部分を直したり、苦手な部分を何度かやり直させたりした。

「井倉君って真面目ですね。毎日きちんと基礎練習を続けてるなんて……。僕は子どもの頃に少しやっただけです」
「でも、基礎は大事だからプロになってもこれだけはみんな続けてるものだって聞きましたけど……」
井倉が驚いたように訊く。
「まあ、そういう人もいますけど、ハノンなんてつまらないもの。僕は曲しか弾きません。それでも、僕は結構才能あったですから、問題なかったです」
そう言ってハンスはにこにこと笑った。

(そうだ。ハンス先生って親しみがあるから、つい忘れていたけど、この人は特別だったんだ。天才にはハノンは必要ないだろうけど、凡才の僕には必要だ。練習しなきゃ……)
井倉は肝に銘じてまた最初から弾き始める。


「では、まずベートーヴェンは第一楽章から弾いてみましょうか」
ハンスが言った。課題は第三楽章の筈だ。井倉は腑に落ちないといった顔をした。
「この曲はね、この抑圧された第一楽章があってこその第三楽章へと続いているんです。だから、第一楽章の想いがわからなければ、とても第三楽章は弾けないのです」
ハンスの言葉に頷きながら、井倉は第一楽章の楽譜を広げた。

(月光か……。有名なのはこの第一楽章だけれど、僕は第三楽章の方が好きだな。そっちの方が思い切り感情を叩きつけられるっていうか、ベートーヴェンらしいって気がするし……)
ハンスがそっと井倉の肩に手を乗せた。
「井倉君、今何を考えたですか?」
「え? 今はその……この曲のことを考えてました。世間では月光といえばこの曲だけれど、僕は思い切り感情を叩きつけているような情熱という意味で三楽章の方がベートーヴェンらしくて好きだなと思っています」

「ベートーヴェンらしい? そうですね。でも、思い浮かべてみてください。静かな夜。澄みきった水に映る月……。そこに大好きな女性の顔を重ねてみて……。彼女と過ごしたいろいろな思い出を……そう。初めて彼女と出会った日……。彼女とどんなことを話ましたか? 彼女はどんな風に笑いましたか? そして、彼女は君に何を求めましたか? その日来ていた服の模様も、彼女が差し出したハンカチの白さも、君ははっきりと思い出すことができるでしょう?」

(彼女と初めて出会った時……。あれは僕が初めて幼稚園に行った日だった……)

――泣き虫ね。ほら、ハンカチを貸してあげる。涙を拭きなさい

(白いレースの縁取りで赤いチューリップの刺繍が付いたハンカチ……。同じ日に入園して、初めて親元を離れて過ごさなければならなかった。僕は寂しくて泣いたのに、彼女は泣かなかった。新しい制服のセーラーカラーとリボンが風に揺れて眩しかった。あの日から、僕は彼女に恋をしたんだ。有住彩香。凛として美しい大輪の花のようだった君に……)
井倉の心は五線の間を泳ぐ音符の間を見つめていた。

「では、その彼女のことを思って弾いてみてください。大好きな彼女と引き裂かれ、無理にお別れをしなければならなくなりました。その想いを託して弾くのです」
(そうだ。たとえ、僕のことを好いてくれなくても、彼女の傍にいられるだけで幸せだった。彼女を見て過ごす毎日が、僕にとっては……。なのに、親父のせいで……! 今はもう滅多に会うこともない。いや、それどころか、僕は彼女に……)
井倉の感情が高まる。

「いいですよ。でも、その想いを他の誰にも悟られてはいけません。そうっと心に忍ばせて……。君の心の中だけに秘められた約束なのです」
ハンスが囁く。
(そうだ。この思い、誰にも話してはいけない。たとえ、それが彼女本人であろうと……。話せば迷惑になる。僕なんかに告白されても……彼女にとっては迷惑。ならば、いっそ、ずっとこの胸の奥にしまって……。ああ、でも、伝えたい、全部言ってしまいたい。けど……)
葛藤しつつ、極力抑え、安定した雰囲気で弾いた。
「そう。いいですね。そのまま第二楽章に行きましょう」
ハンスのやさしい声が頭の中に染みわたった。

(彩香さん……)
そして、彼女への想いが溢れそうになる。
「そう。そして第三楽章へ……」
それまで抑圧されていた想いが弾けた。感情のままに鍵盤の一つ一つが彼女へと通じる扉だと思えた。
(彩香さん……!)
そして、彼は気づいた。繰り返される主題の中で、これはすべてが第一楽章のオマージュ。心の中の感情そのものなのだ。同じ思いを表現している同じ曲だったのかもしれないと井倉は思った。

「そう。いいですね。ばらつきはあるけど、表現はいいです。そのまま練習を続けてください」
ハンスが言った。
「はい」
胸が熱くなり、汗が流れた。それでも、彼はいい気分だった。

「感情過多だな」
いつの間にか黒木が来て言った。
「だが、悪くない。まだ直すべき点は多いが、これなら何とかなりそうだ。さすがはハンス先生。たった半日でここまで指導なされるとは……」
黒木が感服して言った。
「あれ? でも、黒木さん、随分早くじゃありませんか? 僕はてっきり夕方になると思っていました」
ハンスの言葉に教授はぽりぽりと頭を掻きながら言った。

「いや、実は、私も今日からこちらでお世話になろうかと思いまして……」
「え?」
皆が驚く。
「いや、あの理事長のわからんちんが、あまりにたわけたことを申しますのでね、大学の方はすっぱり辞めて来ました」
からくり時計の人形達が出られないまま12時を告げる。
「辞めるって、先生……」
井倉が動揺したように何かを言おうとした。が、黒木はそれを手で制して言った。
「彩香君にはショパンコンクールで優勝したフリードリッヒ バウメン氏を呼んだから、私のような古い考えの人間など必要ないと言うんだ」
「何ですって?」
ハンスも怪訝そうにその顔を見つめる。

「もしかして、僕のせいですか?」
井倉がすまなそうな顔をして訊いた。
「いいや、君のせいじゃない。私も、くそ儲け主義の理事長にはいい加減愛想を尽かしていたんだ。丁度いい機会だったよ。これで、思い残すことなく、存分に君の指導ができるというものだ。喜べ」
「でも……」
井倉は困惑した。

「そこで、誠に勝手な申し出で恐縮なのですが、私もこちらのお宅に居候させていただけないかと思いまして……」
来客にお茶を持って来た美樹とハンスが顔を見合す。
「もちろん、ただとは申しません。井倉が働けなくなった分、この私がいろいろとお手伝いさせていただきますので……」
「はあ。それは構いませんけど……」
美樹が言った。
「せ、先生」
井倉が驚愕したように彼を見つめる。
「な? グッドアイデアだろう」
と、井倉に向かってウインクする黒木を見て、彼はまた前途多難だと思い知った。

「しかし、これまで家のことなどやったことがないんだ。そこのところは一つ、井倉君に教えを乞おうと思う。家政夫井倉先輩、よろしく頼む」
「そ、そんな……それは僕の仕事ですから……」
「いいや、おまえはこれからコンクールのことだけ考えるんだ。そして、その分の仕事は全部わたしに任せればいい。なーに、いくら何でも掃除くらいできるさ」
そう言うと黒木は愉快そうに笑った。その足元には猫達が戯れ、明るい陽射しの中で美樹とハンスも微笑した。